口腔外科
口腔外科について

口腔外科とは
虫歯や歯周病の治療を除く、口内やその周囲の疾患を対象とする外科処置を行う診療科です。
顎関節症、親知らずの抜歯(埋伏などの難しいケースの抜歯も含む)、上唇小帯・舌小帯の付着異常の治療などを行っています。
親知らずの抜歯
一般的に17~30歳頃に生えてくる前歯から数えて8番目の歯のことをいいます。永久歯の中で一番最後に生えてくるためスペースがなく、横や斜めに傾いたり、骨の中に埋まったまま生えてこない場合があります。
このような親知らずは腫れたり隣の歯まで虫歯になることが多く、トラブルの原因になりがちですので、抜歯をおすすめする場合があります。
顎関節症(TMD)とは

顎関節症(TMD)は、あごの関節や周囲の筋肉に関わる不調の総称です。
1つの病気ではなく、筋肉の痛み、関節の痛み、関節の中のクッション(円板)のズレ、関節の変形など、いくつかの状態をまとめた呼び方です。
顎関節症の主な症状
顎関節症でよくみられる症状は、次の3つです。
あごの痛み
- こめかみ・ほほ・耳の前が痛い
- 噛むと痛い、押すと痛い
口が開けにくい(開口障害)
- 口が開かない/開けると引っかかる
- 朝や食事中に急に開かなくなる
(ロック感)
カクカク音(関節音)
- カクッ、ポキッと鳴る(クリック)
- ジャリジャリと擦れるような音(こすれ音)
※症状の出方は人によって異なり、頭痛や首肩のこり、耳の周囲の違和感を伴うこともあります。
顎関節症の分類
| I型 | 咀嚼筋痛 障害 | 筋肉由来の痛み |
| II型 | 顎関節痛 障害 | 関節包・靭帯・滑膜など関節周囲の 痛み |
| III型 | 顎関節円板障害 | 関節内の“円板”の位置異常 |
| III型:IIIa | 復位性顎関節円板障害 | 開閉口で円板が戻る:クリックが典型 |
| III型:IIIb | 非復位性顎関節円板 障害 | 戻らない:いわゆるロックや開口制限が問題になりやすい |
| IV型 | 変形性顎関節症 | 骨変化・変形を伴う関節症 |
日本顎関節学会の病態分類では上記のように分類されます。
これを日常の症状と照らし合わせると以下のように分けられることが多いです。
筋肉が中心のタイプ(咀嚼筋痛)
- あご周りの筋肉がこわばる、だるい
- 食いしばりや疲労で痛みが出やすい
関節が中心のタイプ(顎関節痛)
- 耳の前(関節部)に痛み
- 噛む・口を開ける動きで痛い
関節の中(円板)が関係するタイプ
- カクカク音(クリック)
- 口の開けにくさ、ロック感
変形性顎関節症(関節の変形を伴う)
- こすれ音(ジャリジャリ)
- 関節の骨変化がみられることがある
顎関節症の原因は?
顎関節症は「これが原因」と1つに決められることは少なく、いくつかの要素が重なって起こる(多因子)と言われています。
よく関係するとされる要素
- 負担のかかる習慣:
食いしばり、歯ぎしり、硬いものをよく噛む、頬づえ - 生活・体調の影響:
ストレス、睡眠不足、疲労 - 長時間の開口:
歯科治療、楽器、あくびの後に悪化する
ことも - 外傷:打撲、転倒など
- 関節の変性:
関節の摩耗・変形が関係することも
顎関節症の治療は
何をする?
(当院の基本方針)

まず侵襲の少ない保存療法(セルフケア・運動療法・装置など)から行い、経過を見ながら段階的に進めます。
セルフケア・生活指導
(初期治療の中心)
- 硬いもの、ガム、長時間の咀嚼を避ける
- 大きく口を開ける動作を控える
- 温める(または冷やす)など、症状に
合わせたケア - 日中の「上下の歯を接触させ続ける癖」の見直し
運動療法(開口訓練など)
口の開け閉めや顎の動きを整える訓練を行い、
痛みや動かしにくさの改善を目指します。
マウスピース(スプリント)治療
夜間の食いしばり・歯ぎしりが疑われる場合などに、症状やタイプに応じて検討します。
※マウスピースは万能ではなく、適応と経過観察が重要です。
痛みが強い場合の対症療法
(薬など)
痛みが強い時は、短期的に鎮痛薬などを併用することがあります(全身状態により適応を判断)。
専門治療(必要な場合)
ロックが強い、保存療法で改善が乏しい、関節内の問題が疑われる場合には、専門的な評価や処置(関節洗浄など)を検討します。
放置するとどうなる?
(放置リスク)
症状が増減しながら自然に軽くなる例もある一方で、放置により困りごとが続くケースもあります。
放置で困りやすいこと
- 痛みが長引いて慢性化し、日常生活
(食事・会話)に支障 - 開口障害が続き、歯科治療が受けにくい
- 変形性の変化がある場合、音や動かし
にくさが残る可能性
受診の目安
(こんな時は早めにご相談ください)
次のような場合は、早めの評価をおすすめします(他の病気の鑑別も重要です)。
- 口が指2本分も開かない、急にロックした
- 強い腫れ、発熱、外傷後の痛み・変形
- しびれなどの神経症状がある
- 2~4週間以上、痛みや開けにくさが続く
よくある質問(FAQ)
Q1. 顎関節症は「噛み合わせが
悪いから」起きるのですか?
A. 現在は、顎関節症は複数の要因が重なって起こると考えられており、噛み合わせは要因の一つに挙げられます。
そのため噛み合わせを直すと症状が緩和されることも多いですが、完全に顎関節症は治癒しないこともあります。
Q2. マウスピースを作れば治りますか?
A. 症状やタイプにより有効な場合がありますが、万能ではありません。
セルフケアや運動療法と合わせて、経過を見ながら調整します。
Q3. 放っておけばそのうち治り
ますか?
A. 自然に軽くなる例もありますが、痛みが続く・口が開かないなどの症状がある場合は、慢性化を防ぐためにも早めの検診が安心です。
上唇小帯・舌小帯の
付着異常
(上唇小帯強直/
舌小帯短縮症)

上唇小帯(上唇の内側の“すじ”)や舌小帯(舌の裏側の“すじ”)が、太い・短い・付着位置が前方などの状態を「付着異常」と呼ぶことがあります。
小帯の処置は、必要な方に、適切な時期に行うことが大切です。
症状がない場合や時期が早すぎる場合は、経過観察が推奨されることがあります。
上唇小帯(上唇のすじ)の付着異常
上唇小帯とは
上唇小帯は、上唇の内側と上あごの歯ぐきをつなぐすじです。
小帯が太い・短い・歯ぐきの深い位置まで入り込んでいる場合、歯ぐきが引っ張られたり、前歯のすき間に関与することがあります。
どんな症状がある?
- 上の前歯の真ん中がすきっ歯(正中離開)が気になる
- すじが当たって歯みがきしにくい/
歯ぐきが引っ張られて痛い - 歯ぐきが下がりやすい
(部位や清掃状態によります)
原因は?
多くは生まれつきの形態差です。
成長に伴い小帯の位置が変化し、目立たなくなることもあります。
すきっ歯の原因は小帯だけとは限らず、歯の大きさ・本数・萌出時期・習癖など複数の要因が関係することがあります。
治療が必要になることがあるケースとタイミング
- 歯ぐきの引っ張りが強く、痛み・出血・清掃困難などの症状がある
- 矯正治療で正中のすき間を閉じた後に、後戻りリスクの評価として小帯処置を検討する(矯正と連携して判断)
- 永久歯の生え変わり途中は自然に閉じることもあるため、時期を見ながら判断する
治療法(小帯切除/小帯形成)
局所麻酔を行い、小帯の緊張を弱める処置
(切除/形成)を行います。
目的は見た目だけでなく、引っ張りを減らし、清掃しやすい環境を整えることです。
メリット
- 歯ぐきの引っ張り感が減り、歯みがきがしやすく
なることがある - 矯正治療と連携することで、後戻り対策として役立つ可能性がある
(適応と時期が重要)
デメリット・注意点
- 外科処置のため、出血・腫れ・痛み・治癒までの
違和感が出ることがある - すきっ歯の原因が小帯だけでない場合、処置だけで改善しないことがある
舌小帯(舌のすじ)の付着異常
(舌小帯短縮症)
舌小帯とは
舌小帯は、舌の裏側と口の底をつなぐすじです。
小帯が短い/付着が前方などの場合、舌の動きが制限されることがあります。
どんな症状がある?
(年齢によって異なります)
舌小帯が原因かどうかは、症状(困りごと)と所見を合わせて評価します。
幼児〜学童:発音(構音)への影響
発音は成長や練習で変化することがあり、舌小帯が原因かどうかの評価が重要です。
見解として、舌小帯が原因の構音障害の手術適否は5歳以降に判断しても十分回復可能と整理されています。
思春期・成人:舌の動かしづらさ/
清掃性
- 舌先が上あごに届きにくい、舌の運動が
しにくい - 舌の動きが原因で清掃が難しい、
口腔機能の困りごとがある
治療が必要になることがあるケース
- 症状(困りごと)があり、診察で舌の可動制限が確認できる
- 授乳・発音・口腔機能の問題と舌小帯の関連が示唆され、他の要因評価も行ったうえで適応がある
治療法(舌小帯切除/切開)
局所麻酔下で小帯を切開・切除し、舌の可動域を確保します。
必要に応じて舌の使い方の訓練(機能訓練)も含めて経過をみます(必要性は年齢や症例で異なります)。
メリット
- 適応が合う場合、舌の動かしづらさが改善し、口腔機能の困りごとが軽くなる可能性
- 授乳や発音に関与していると判断できるケースでは、問題の改善につながる可能性(過剰診断に注意)
デメリット・注意点
- 外科処置のため、出血・腫れ・痛み・治癒までの
違和感 - 適応が合わない場合、期待した改善が得られないことがある
当院での診断・治療の流れ
問診
何に困っているか(すきっ歯/歯ぐきの引っ張り/授乳/発音/舌の動きなど)
診査
小帯の位置・緊張、歯並び、歯ぐき、舌の可動域を確認
必要に応じて、矯正・小児・言語(構音)の適応と時期を検討
処置を行う場合は、メリットだけでなく限界・リスクも説明した上で実施
術後チェック
治癒確認、必要なら機能面のフォロー
よくある質問(FAQ)
Q. すじがある=切った方がいい
ですか?
A. いいえ。小帯は誰にでもあります。
大切なのは「症状(困りごと)があるか」「原因として関与しているか」「適切な時期か」です。
Q. すきっ歯は小帯を切れば閉じ
ますか?
A. 小帯だけが原因とは限りません。
矯正治療と連携して判断することが多く、時期も含めて検査で確認します。
Q. 舌小帯は赤ちゃんのうちに切った
方がいい?
A. 明らかな哺乳障害がない場合は処置不要とされます。
授乳の困りごとがある場合も、他の要因の評価と支援を行ったうえで適応を検討します。
Q. 発音が心配です。いつ相談すべき?
A. 舌小帯が原因かどうかの評価が重要です。
時期はお子さまの成長や状況により異なるため、まずはご相談ください。